2020年

9月

26日

田中学園 立命館慶祥小学校

 

元日ハム賢介氏の学校名「田中学園立命館慶祥小」に


プロ野球北海道日本ハムの元選手で球団スペシャルアドバイザーの田中賢介氏(39)は24日、自身が理事長を務める学校法人田中学園(札幌)が2022年4月に札幌市内に開校予定の私立小学校の校名について、「田中学園立命館慶祥小学校」に決まったと発表した。

田中学園は江別市で立命館慶祥中学・高校を運営する学校法人立命館(京都市)と連携協定を締結済みで、同小から同中高への特別推薦枠を設ける。

 田中氏と立命館の久野信之常務理事らが24日、札幌市内で共同会見した。

 田中氏は会見で連携協定の内容として、特別推薦枠の設定に加え、立命館が同小の児童募集に協力すること、教職員の人的交流などが盛り込まれたことを説明。

同小の具体的な教育プログラムとして、体育など実技教科の授業を英語で行う「イマージョン教育」を週10時間行うことや、田中氏自らが内容を企画する授業「Kタイム」を週1時間設けることなども紹介した。

 田中氏は「(小中高)一貫した教育で『世界に挑戦する12歳』から『世界に通用する18歳』につなげる。北海道から世界に羽ばたく人材を育てたい」、久野常務理事は「子どもたちの挑戦を後押しする志に共感した。6歳から世界を見据える今までにない学校を共につくりたい」と話した。

 同小の建設予定地は札幌市豊平区の西岡中央公園の隣接地で、来月にも着工予定。初年度は1~4年生を募集し、来秋にも願書の受け付けを始めたい考え。

学校HP
https://tanakagakuen.ed.jp/


北海道新聞から転載
2020.9.24


2020年

5月

18日

元日ハム賢介氏、札幌に小学校 立命館と連携へ 22年開校目標

 

2児の父親、現役時代から教育に熱心

 プロ野球北海道日本ハムの元選手で球団のスペシャルアドバイザー(SA)を務める田中賢介氏(38)が、札幌市内に私立小学校開設を計画していることが17日、分かった。2022年4月の開校を目指す。既に学校法人設立を済ませて計画を道に提示しており、今年12月にも正式に申請する。江別市で立命館慶祥高校、同中学を運営する学校法人立命館(京都市)に進学教育などの協力を要請中で、立命館側からは前向きな返答を得ているという。連携が実現すれば、将来的に道内初となる小中高から大学につながる一貫教育への可能性も広がりそうだ。

 設置と運営は学校法人「田中学園(仮称)」(田中賢介理事長)が行う計画。学校名は未定。関係者によると田中氏側から学校法人立命館に対し、進学や国際教育についての連携を求め、現在は両者で具体的な協議を進めている段階という。田中氏は2児の父として現役時代から教育に熱心で、学校運営に対しても高い関心があったとみられる。

 設置場所は札幌市豊平区西岡1の7で、西岡中央公園に隣接する約2万5千平方メートルを取得予定。敷地内にある今年3月まで札幌大の研修施設として使われていた3階建ての建物を改修するなどして、校舎と体育館、グラウンドを整備する。定員は1学年50人の計300人で、各学年2学級。教職員38人のうち10人は外国人とする計画で、語学教育にも力を入れて「世界に挑戦する12歳」の育成を目指すという。

 

 

2020.5.18

北海道新聞から転載

 

 

2017年

11月

09日

慶應幼稚舎のお受験、ペーパーテストなしでどうやって子どもを評価するのか

 

 

「諸君! 入学おめでとう! もう君たちに受験はありません。16年間、慶應義塾でともに身体を鍛え、楽しく学んでほしいと思います」

 

 これは、慶應幼稚舎の入学式における塾長の冒頭挨拶だという。

 彼ら・彼女たちはわずか6歳にして「慶應卒」という肩書きを手にいれた。もう受験戦争に巻き込まれることもなければ、浪人する心配もない。

 では一体、どのような試験を乗り越えているのだろうか。今回は幼稚舎の入学試験について掘り下げて考えてみたい。

 

 

 例年、試験内容は大きく3つのパートに分かれている。

 体操テスト、行動観察テスト、そして絵画・製作テストだ。他校との大きな違いがこの考査内容にある。そして、ここに「慶應」ならではの特徴が見られる。

 併願校として上げられるのが、共学の場合は早稲田実業、青山学院、学習院、成蹊。男子校であれば暁星や立教、女子校だと聖心、白百合、雙葉などが代表格だ。

 これらの小学校では、いずれも高い難易度のペーパーテストと面接(保護者同伴のケースも多い)を実施している。ちなみに慶應の横浜初等部でもペーパーテストが実施されている。

 では一体、なぜ幼稚舎はペーパーがないのだろうか。そして、どうやって子どもの能力を判断しているのだろうか。

 まずは、過去の幼稚舎の試験内容のうち特徴的なものを簡単に紹介したい。

 

 

体操テスト

 

 一番最初に実施される体操テストには、模倣体操やサーキット運動がある。

 模倣体操は、先生の指示どおりに、指折り・膝屈伸・前後屈・左右体伸ばし、その場でケンケン・飛行機バランス・前後腕回しなどを行う。月齢による違いはほとんどなく、考査の日時によって順番や内容が前後するという。

 サーキット運動では、ひとりの先生の説明を聞きながら、別の先生がお手本を見せる。試技は3回で、以下のような流れになっていたという。

 

1)スタートラインに並び、ひとりひとりスタートの枠に入る。

2)先に引いてあるラインまでダッシュし、ゴムとびを行う。

3)そして次の線までダッシュし、カゴの中のボールを壁に向かって投げ、跳ね返ったボールをキャッチしてボールをカゴに戻す。

4)次にコーンを周り、次の次の線までダッシュする

5)ゴールの線を越えてから、歩いて、スタートの列の一番後ろにつく。

 スタートは正座、長座、仰向け寝など、指示が変わる。難易度は子どもの生まれ月によっても変化するそうだ。

 多くの受験塾では、最初に発表された「お約束」(例:線を踏まない・お友達を抜かさないなど)を守ったり、指示通り動くことが評価されていると保護者に説明している。運動能力として早い・上手いというのも重要だが、その姿勢も見られているのだろう。

 

 

 

行動観察テスト

 

 体操の次に待ち受けるのは、行動観察テストだ。かつて実際に行われた集団ゲームでは「ボール送りゲーム」と「自由遊び」があったようだ。

 

 前者のゲームでは、約7人グループを3つ作る。皆で手をつないで輪を作り、さまざまな種類のボール(ドッジボール・スポンジボール・テニスボールなど)を回していく。先生の合図で内側外側、時計回り、反対回り、ボールの数や種類が増えていくという。

 

 後者は、10~15種類のおもちゃが置いてあるスペースで、自由に遊ぶように指示を受けるものだ。おもちゃには『黒ひげ危機一発』などがある。

 これらの行動観察では「素」の姿が見られているという。保護者や受験塾などからの訓練で刷り込まれた姿よりも、心から参加できているかなどの子どもらしさが問われる。

 

 そのほか、お友だちと譲り合いができるかなど、協調性・傾聴力も同時に見られていると考えられる。

 

 

絵画・製作テスト

 

 そして最後は絵画・製作テストだ。

 まずはマットに並んで、先生のお話を聞く。たとえばこんな感じだ。

「妖精さんがある森の中にいました。妖精さんはいつも“人間の国に行きたいな”と思っていました。そこである日、女の子の姿になってこっそり森から出て行きました。

 妖精さんがしばらく歩いていくと、普段は見ることができないポストやブランコを発見しました。途中で通りかかった公園で、お弁当を食べている子を見つけて、妖精さんも“お弁当を持ってくればよかったな”と思いました」

 というエピソードを聞いたあとに、こういった指示を受けるという。

 

妖精の女の子にあなたの好きなお弁当を持っていくとしたら、どんなお弁当を作りますか? それを作ってください

 

 試験会場の真ん中に8色の色画用紙が置いてあり、それを使ってお弁当を作らせるのだ。そして、先生からは1回しか取りに行ってはいけないと指示がある。紙を用意すると、先生がお手本を見せる。紙をくしゃくしゃにして丸めたり、筒を作ったりするようだ。そして子どもたちは、個人机に移動をし、机の上に置いてある用具を使って「お弁当」をつくるのだ。

 そして、その後は絵画のテストだ。白画用紙を渡された子どもたちは

 

妖精さんがお弁当を食べた後、どのようにあなたと妖精さんは過ごしますか? その絵を描いてください

 

 という課題をもとに絵を描き始める。この間に机に回って来た先生からはさまざまな質問をされるという。

 

 ここでは、製作物をつくる際に材料を「無駄にしない」「奪い合わない」などの使い方が見られいるという。さらに、先生からのお伺いによるコミュニケーション能力も見られる。そして、製作物自体の出来不出来よりも、表現しようとしている内容にユーモアや発想力があれば評価はされるようだ。

 

 

結局、何が見られているのか?

 

 さて、これらの試験科目のなかで、何が重要視されているのだろうか。

 学校説明会で話される内容に多少のヒントが見つかった。それは「独立自尊」「社中協力」「獣身」というキーワードである。

 

 まずは慶應義塾の基本精神でもある「独立自尊」だ。慶應では、何事も自分のアタマで考えて行動することを重要視している。

 

 福澤諭吉先生のお言葉で「天賦の気品如何にも高潔にして心身洗ふが如く一点の曇りを留めず」とあるが、頭が良くても運動が出来てもそれだけでは足りない、発想力や気品を備えていることが何よりも大切なのである。

 

 幼稚舎には立派な工作室がある。それもまるで美大のような空間だ。発想力をいかに養うかという点についても教育上、重要視されているのだろう。芸能人でいえば、たとえばOGの森泉さんなんかは、いかにも幼稚舎らしさが出ているように思う。

 

 次の「社中協力」も福澤先生が唱えた思想だ。在校生・卒業生・教職員が協力して慶應を盛り立てるという意味がある。「3人寄れば三田会」といった言葉があるように、卒業生たちの連帯意識の強さは実社会でも発揮されている。

 

この精神は、試験科目にもある行動観察で、そのポテンシャルがあるかどうかも含めて先生たちからしっかりと見られているのだろう。

 

 そして最後の「獣身」というキーワードも外せない。この「獣身」というのは福澤先生が教育の鉄則として『福翁自伝』にも書かれている「先ず獣身を成して後に人心を養う」という言葉からくるもの。“獣”と書かれているが「健康な身体」という意味だ。ちなみに、この言葉のあとには「犬猫の子を育てると変わることはない」と続いている。

 

 幼稚舎がペーパーテストを実施せずに体操テストを重視しているのは、この教えによるところが大きいようだ。

 

 そして、幼稚舎に入学したあとも、子どもたちは「獣身」をつくっていくことになる。幼稚舎での6年間はクラス替えがない。勉強は文科省が義務とする最低限しか課せられないのだ。その分、彼ら・彼女たちは中等部や普通部に進学後、学力レベルの高い外部生とともに徹底的に勉学に励むことになるのだが……。

 


<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。港区で生まれ育ち半世紀を過ごしている。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。

 

週刊女性プライム 

2017.7.5

 

2017年

10月

06日

小学校理科室から出火=児童ら避難、けが人なし(付属竹早小)

 

 

6日午前11時半ごろ、東京都文京区小石川にある東京学芸大付属竹早小学校の3階理科室から出火した。

 児童らは屋外に避難し、けが人や逃げ遅れなどは確認されていない。東京消防庁のポンプ車など約20台が出て消火活動に当たっている。

 現場は、東京メトロ後楽園駅から北西約900メートルの学校や大学などが立ち並ぶ地域。 

2017年

8月

30日

国立大付属校に「脱エリート化を」 学力でなく抽選に?

 

 

 国立大学の付属校が「エリート化」し、本来の役割を十分に果たせていないとして、文部科学省の有識者会議は29日、学力テストではなく、抽選で選ぶことなどを求める報告書をまとめた。学習能力や家庭環境などが違う多様な子どもを受け入れ、付属校での研究成果を教育政策にいかしやすくすることが狙いだ。2021年度末までに結論を出すよう、各大学に求めた。

 国立大の付属校は本来、実験的・先導的な学校教育を行う▽教育実習の実施▽大学・学部の教員養成に関する研究への協力――といった役割を担う目的で設立された。だが、「一部がエリート校化し、教育課題への取り組みが不十分だ」などの指摘が出ていた。また、学校現場で教員の新規採用が減る一方、発達障害や外国人の子の支援へのニーズなどが高まり、有識者会議は国立の教員養成大・学部の改革と一体で付属校のあり方を検討してきた。

 報告書では入学の際に学力テストを課さず、研究・実験校であることについて保護者の同意を得て、抽選で選考することや、学力テストが選考に占める割合を下げることを提案。同じ国立大の付属校間で、無試験で進学できる仕組みにも見直しの検討を求めた。「多くの学校に共通する課題と対応策のあぶり出しが重要だ」とし、教員の多忙化解消などで付属校が先導役になることも求めた。

 文科省によると、国立大付属学校は現在、幼稚園49、小学校70、中学校71、高校15など計256校あり、約9万人が通っている。


■有識者会議が国立大付属校に求める主な改革

・学力テストを課さず、抽選など多様な選考を実施

・同じ国立大付属校間の無試験の「内部進学」などを見直す

・教員の多忙化解消などで公立校のモデルをめざす

・30~40年の長期間の教職生活を視野に、教員の研修機能を強化

・2021年度末までに結論をまとめ、できるものから実施


朝日新聞社  2017.8.29    転載

2017年

3月

22日

こちらは着々と…東京に“59年ぶり私立小学校”

 

こちらは着々と…東京に“59年ぶり私立小学校”

 

 

 

“私立小学校の新設”と聞けば、今や誰もがコンニャク、教育勅語、そして安倍夫妻の顔まで浮かぶようになってしまった。でも、それは大阪のあの学園に限ってのお話。

 東京・世田谷では騒動とは関係なく、東京農業大学が着々と私立小学校新設の準備を進めている。

 教育雑誌記者の話。

「これまで農大は、高校を3つ、中学校を2つ開校してきました。ここにきて小学校をプラスすることによって、農大のブランド力を一層高めようとしているのです。農業はもちろん、大学の設備を使った体験授業など、農大ならではのカリキュラムを考えているそうで、2019年の開校を目指しています」

 もし都が認可すれば、23区内では59年ぶりという。

 半世紀以上もの間、なぜ新設が叶わなかったのか。

「一番は土地の問題です。23区内で中規模の小学校を新設する場合、都の規定で、児童一人当たり10平方メートル分の広さを持つ運動場が必要となります」(同)

 学校関係者によれば、新設予定の小学校は1学年2クラスで、1クラス当たり36人というから、全校生徒432人×10で4320平方メートル。これは東京ドームグラウンド3分の1の広さ。国有地を格安で払い下げてもらえれば話は別だが、23区内でこの広さを確保するのは確かに厳しい。

「農大の場合、キャンパス内の所有地に設置するため、土地取得の必要はありません。校舎の建築費も自前で賄っています」(先の関係者)

 それでも、認可までの道のりはまだまだ遠い。

「昨年11月にやっと設置計画書が承認され、翌月からようやく着工しました。来年4月末に設備が全て完成した段階で再度審査があり、認可が降りるのは9月末が最短。そこから願書を受け付け、11月に入学試験、翌年4月に入学式ですから、バタバタですよ」(同)

 工事の段階で認可申請をしていたあの学校とは大違いだが、その一方、ちょっとだけ似ている点もある。新設予定の小学校の名は、大学の花である「稲の花」から取り、「稲花(とうか)小学校」と名付ける予定。一方、森友学園が新設を目指していたのは、「瑞穂の國記念小學院」。偶然、どちらも米に由来する名が冠されている。

 とまれ、こちらは無事に開校を迎えられそうだ。

「週刊新潮」2017年3月23日号 掲載

2016年

12月

08日

滋賀・近江兄弟社小が募集停止 18年度以降、入学者数低迷で

 

学校法人ヴォーリズ学園(滋賀県近江八幡市)が、県内唯一の私立小である近江兄弟社小(同市浅小井町)の2018年度以降の募集を行わない方針を固めたことが7日、分かった。少子化による入学者数低迷と県内での私立小のニーズ低下が大きな要因。在校生が卒業するまで教育活動は続ける。


 県私学・大学振興課や同校によると、現在の在校生は151人と収容定員432人の35%にとどまる。入学者数は5年連続で募集定員を下回り、人件費や運営費をまかなう上で採算のとれない状態が続いてきた。


 学校法人が11月14日に開いた常任理事会で募集停止の方針を決断した。今月15日の理事会と評議員会で正式に決定し、17日に教職員と在校生の保護者、来春の入学予定者の保護者を対象にそれぞれ説明会を行う。全校児童には7日の朝礼で事情を伝えた。


 募集を再開しない限り、17年度の入学者が卒業する23年3月で休校となる。清田剛校長は京都新聞の取材に対し、「非常に残念な決断をしなければならない。100年を超える歴史あるヴォーリズ学園がさらに発展する過程の一つと受け止めている。最後の一人が卒業するまで努力を惜しみません」と話した。


 近江兄弟社小のホームページによると、1922年に創立されたキリスト教主義を建学の精神に据えるヴォーリズ学園が母体で、47年に開校。2014年に現在地に移転した。

 

京都新聞 2016.12.8

2016年

2月

02日

2022年 公立初の小中高一貫校 開校へ

 

 

写真・図版
都立小中高一貫校の構想



東京都が6年後、小学校入試の「お受験」に参入する。公立初の小中高一貫校をつくり、入試で選んだ子どもを「エリート」に育てる考えだ。私立側には早くも、学費が格安なライバル出現を懸念する声がある。

 


 「世界で活躍し、日本の将来を担う人材を育成する」。都教育委員会の幹部らでつくる一貫校新設の検討委員会はログイン前の続き、一貫校の目標をこう掲げている。

 

 

 2022年度開校を目指す一貫校の看板は、「英語教育」。小学校低学年から外国人が指導し、中学・高校では英語で論文を書いたり、議論したりする力をつける。海外留学にも力を入れる考えだ。他の教科も土曜授業などで授業数を増やし、中学の内容を小学校で教えるなどの「先取り教育」をする。

 

 

 児童は入試で選ぶ。ただ、小学校の入試に受かった全員が高校まで進めるわけではなく、中学入学時には小学校の成績を踏まえふるい分けるという。

 

 元々発案したのは猪瀬直樹前知事。「理数系人材の育成」を掲げたが、「幼児段階で理数系の才能を評価するのは困難」などと疑問視され、猪瀬氏の辞任もあって頓挫。その計画が内容を変えて復活した。「都立ブランド向上の一助になれば」と都教委幹部はいう。

 

 

 都立校では、日比谷高校などが難関大への合格者数の多さを誇っていたが、1970年ごろから私立が優勢に。都教委は03年の学区制撤廃などで挽回(ばんかい)を図り、05年から都立中高一貫校を10校新設した。授業料が格安で、毎年東京大などへの合格者を出しており、応募倍率は5~7倍ほどと人気だ。そこに今度は小学校も加え、「子どもの資質や能力を一層伸ばす」(都教委幹部)という。別の幹部は「私立に通えない低所得層の受け皿としても公立の一貫校が必要」と話した。

 

 

 新設校は、都立中高一貫校の立川国際中等教育学校(立川市)に付属小を設ける形で開校する予定。教育委員からは「都立にしかできない学校像が見えない」など異論も出たが、検討委は「公立校の新たな教育モデル」にしたい考えだ。

 

 

 文部科学省によると、公立小が入試を行うことは、法令上問題ないという。担当者は「東京など財政力のある自治体に限った動きだろう。現行の『6・3・3』より良い学制を探る例として注視する」と話す。

 

 


 ■学費格安、戸惑う私立

 

 

 都の構想に、私立側からは困惑する声も漏れる。

 

 「受験競争の過熱化を招き、教育格差を拡大する」。1月下旬にあった都教委の定例会で、都内の私立426校でつくる東京私立中学高校協会が出した「抗議文」が紹介された。協会の幹部は「少子化が進み、私立小の児童募集は難しくなる。なぜ今さら公立が進出するのか」と言う。

 

 

 「小中は学費無料でしょ? 子どもをとられる学校が出てくると思う」。東京23区内のある私立小学校長は都立小の影響を心配する。私立小の初年度納入金は100万円超が珍しくない。「都立一貫校から難関大に多く進んだり、今後23区内にもできたりしたら、人気を集めるだろう」と話す。

 

 一方、23区の別の私立小学校長は「私立小に通わせる親は校風を気に入っていたり高所得だったりする人たち。都立小は受験層を広げる可能性はあるが、私学に影響はない」と冷静だ。

 

 受験情報サイトを運営するバレクセル(東京都渋谷区)などによると、私立・国立の小学校は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に約100校あり、約1万人が受験する。子どもの多くが受験準備で塾に通うといい、費用は年100万~200万円も珍しくないという。

 

 

 長女(3)を受験塾に通わせる東京都新宿区の主婦(35)は「安い学費は魅力だけど、公立には教員異動があるので不安」。

 

 小学校受験塾「アンテナ・プレスクール」(渋谷区)の石井至校長は「都立小の成否は、どれだけ優秀な教員を集められるかがカギ」とみる。

 

 「〈お受験〉の歴史学」の著書がある同志社女子大の小針誠准教授(教育社会学)は「東京の公立復権のためには、特殊な1校をつくるだけでは意義が薄い。公立全体の底上げにこそ力を入れるべきだ」と話す。


2016.2.2  朝日新聞から転載

 

 

2015年

7月

01日

<独禁法違反警告>新設校に「私立小児童の転入やめて」要請


西日本私立小学校連合会(西私小連)など4団体が新設校に対し、他の私立小の児童を転入させないよう要請したことが分かり、公正取引委員会は30日、独占禁止法(事業者団体による競争制限)に違反するおそれがあるとして警告した。西私小連は少子化に伴う児童の引き抜き合いを防ぐため加盟校間での転校も制限していた。公取委が私立小の団体に同法違反の疑いで警告するのは初めて。

 西私小連には近畿、中国、四国、中部、北陸地方の私立小59校が加盟する。他に警告を受けたのは大阪府、京都府、兵庫県の私立小連合会。

 公取委によると、4団体が2013年3月、洛南高校付属小(京都府向日=むこう=市)の開校を翌年に控えた学校法人真言宗洛南学園に、他の私立小の児童を受け入れないよう要請した。同校は西私小連に加盟していないが、2、3年生の転入学試験の募集要項に京都府内の私立小の児童は受験を「遠慮」するよう記載。公立小在籍と偽って出願した私立小児童2人が、合格後に入学を辞退することになったという。

 西私小連は12年5月の総会で、近隣府県の加盟校間の転入は原則として認めないと決めた。京都、大阪、兵庫の3団体も同様の取り決めをしていた。

 公取委は「教育サービスの取引分野で競争を実質的に制限していた疑いがある」と指摘。4団体はすでに決定を破棄した。

 また、京都私小連が入試の実施日を統一し、大阪府私小連と兵庫県私小連が新設校に募集学年を限定するよう要望することを決定していたことも独禁法違反につながるおそれがあるとして、公取委は30日、口頭注意した。

 西私小連は洛南学園への要望について「東大など国立大合格者が多い洛南高校の付属小に児童が転校することを危惧した」と説明したという。

 国の学校基本調査などによると、3府県の児童数が減る一方、「関関同立」と呼ばれる有名私大が相次いで小学校を開設し、私立小の学校数は04年32校から14年39校に増加。経営環境が悪化し、過去4年間に西私小連加盟校で常に定員を満たしたのは13校にとどまった。

 大阪府私小連の松藤吉弘事務局長は転入禁止の取り決めについて「過当競争を回避するための紳士協定だった」と釈明している。西私小連の大谷彰良(てるよし)会長は「法令順守の徹底に努めたい」とのコメントを発表した。

 ◇元文部官僚の寺脇研・京都造形芸術大教授の話

 どこで学ぶかは児童の自由だ。私立小が児童の転校を制限するのは、児童の学習する権利を無視していると言える。文部科学省は他の地域でもこのような慣行がないか調査すべきだ。


2015.6.30 毎日新聞から転載


2015年

6月

24日

学力、お金、人間関係…「公立校と私立校」選択の差

 

 私立中高一貫校を中心に、私立校が人気だ。教育力が高そう、生徒一人ひとりを丁寧に見てくれる、生徒指導がしっかりとしている、裕福な家庭が多いのでイジメが少なそう…などさまざまな理由がありそうだが、公立校に比べて学費が高い私立校は本当に“おトク”なのだろうか。


 『公立VS私立』(橘木俊詔/ベストセラーズ)は、小学校、中学校、高校、大学に至るまで、「学力」「お金」「人間関係」の3要素で「公立VS私立」を比較している。公立と私立の選択で、どれくらいの差が表れるものなのだろうか。本書では、政府の統計、週刊誌のランキング、そして独自に行った公立中高・私立中高出身者へのアンケートなどを元に、徹底的に数値で比較しているのだが、データをすべて掲載するわけにはいかないので、かいつまんで紹介したい。(※本書は2014年2月に出版されており、データは最新ではない場合がある)

 



(1)学力…いい教育が受けられるのは?

・2013年度全国学力テスト
全国の小・中学生が対象。私立校のほうが正答率が高い。私立中学では学力試験を課し、学力が高い生徒を選別しているからと考えられる。また、入学後、塾や家庭教師といった学校外での学習が常態化していることも、大きな要因か。

・「いい大学」に行けるのは
「東大合格者ランキング」は私立中高一貫校からの合格者が圧倒。「京大合格者ラインキング」もトップ10のうち7校が私立。

・国際的な学力調査PISA(OECD加盟国の生徒に対する学習到達度調査/2009年度調査結果)
「読解力」の項目…国公立が上回る。私立高校は非常にさまざまなランクの学校があり、学校間格差が顕著であるからか。

 高偏差値の大学に行けるトップ層には私立高出身者が多いが、全般的なテストの平均値では、学校間格差が少ない公立校のほうが高い。

・「学問」の探求
日本人歴代ノーベル賞受賞者19人は、すべて国立大出身。国立大の研究補助金が潤沢だからか。また、私立と国公立大では、教員数と生徒数の割合で約2倍の開きがある。その分、国公立大のほうが濃く学ぶことができる。

 

 



(2)お金…「コスト」と「リターン」からみて経済的なのは?

・大学卒業までにかかる学費(典型的なケース)
オール公立…949万円(小中高大とも公立)
中学から私立…1642万円(公立小、私立中高、大学は私立理系)
オール私立…2344万円(私立小、私立中高、大学は私立理系)

 低成長時代の不況下で、会社員の給料は下がるが大学費用の割合は高まっており、世帯年収の4割が学費負担に。慶應義塾大ですら、自宅通学の学生が多く「関東圏の一ローカル大学化している」とも。

・中学受験の「リターン」
年収を比較すると、中高に限っては、私立中高出身者のほうが「金銭的にはかなり回収している」。

・生涯年収(「大学別生涯賃金期待値ランキング」週刊ダイヤモンド/2012.11.3号)
1位は、主要400企業への就職率が54.4%とダントツの一橋大学。2位に国際教養大。3位は慶應。

 基本はオール国公立コースが費用最少で高リターン。ただし、卒業後は私立のほうが人脈などの面で有利な場合もあるので、中学から私立に行くという選択もあってよさそう。国立大へ入学するために私立中高を選ぶ層は少なくない。

 

 



(3)人間関係…豊かな人間関係が築けるのは?

私立校=特定の階層が集まりやすい
 とくに別学の場合は深い絆を持った同性の友だちができやすい。男子校出身者の卒業後の“親友関係キープ率”は6割を超えるというデータも。中高一貫校では、3年間の学校に比べ、そのぶん友情を育みやすい。

公立校=社会の縮図
 いろいろな子どもがいる環境で育つことで、応用力がある、幅広い考え方を持つ大人になる可能性が高い。大人になってから気づいたのでは遅すぎる。

 公立校と私立校を同列に比較するのはお門違いという意見もある。私立校は独自の教育方針に基いて教育を行い、公立校は税金の投入により特殊な教育方針に縛られることなく、国民全員に対して平等に教育水準を上げることが目的だ。子どもには個性がある。学力、お金、人間関係についての比較だけで学校選びをするのではなく、公立・私立向き、教育方針、部活動、校風に合うかなどの相性も大切にしてもらいたい。

 

2016.6  ダ・ヴィンチニュース から引用