西日本私立小学校連合会(西私小連)など4団体が新設校に対し、他の私立小の児童を転入させないよう要請したことが分かり、公正取引委員会は30日、独占禁止法(事業者団体による競争制限)に違反するおそれがあるとして警告した。西私小連は少子化に伴う児童の引き抜き合いを防ぐため加盟校間での転校も制限していた。公取委が私立小の団体に同法違反の疑いで警告するのは初めて。
西私小連には近畿、中国、四国、中部、北陸地方の私立小59校が加盟する。他に警告を受けたのは大阪府、京都府、兵庫県の私立小連合会。
公取委によると、4団体が2013年3月、洛南高校付属小(京都府向日=むこう=市)の開校を翌年に控えた学校法人真言宗洛南学園に、他の私立小の児童を受け入れないよう要請した。同校は西私小連に加盟していないが、2、3年生の転入学試験の募集要項に京都府内の私立小の児童は受験を「遠慮」するよう記載。公立小在籍と偽って出願した私立小児童2人が、合格後に入学を辞退することになったという。
西私小連は12年5月の総会で、近隣府県の加盟校間の転入は原則として認めないと決めた。京都、大阪、兵庫の3団体も同様の取り決めをしていた。
公取委は「教育サービスの取引分野で競争を実質的に制限していた疑いがある」と指摘。4団体はすでに決定を破棄した。
また、京都私小連が入試の実施日を統一し、大阪府私小連と兵庫県私小連が新設校に募集学年を限定するよう要望することを決定していたことも独禁法違反につながるおそれがあるとして、公取委は30日、口頭注意した。
西私小連は洛南学園への要望について「東大など国立大合格者が多い洛南高校の付属小に児童が転校することを危惧した」と説明したという。
国の学校基本調査などによると、3府県の児童数が減る一方、「関関同立」と呼ばれる有名私大が相次いで小学校を開設し、私立小の学校数は04年32校から14年39校に増加。経営環境が悪化し、過去4年間に西私小連加盟校で常に定員を満たしたのは13校にとどまった。
大阪府私小連の松藤吉弘事務局長は転入禁止の取り決めについて「過当競争を回避するための紳士協定だった」と釈明している。西私小連の大谷彰良(てるよし)会長は「法令順守の徹底に努めたい」とのコメントを発表した。
◇元文部官僚の寺脇研・京都造形芸術大教授の話
どこで学ぶかは児童の自由だ。私立小が児童の転校を制限するのは、児童の学習する権利を無視していると言える。文部科学省は他の地域でもこのような慣行がないか調査すべきだ。
2015.6.30 毎日新聞から転載