2017年

10月

06日

小学校理科室から出火=児童ら避難、けが人なし(付属竹早小)

 

 

6日午前11時半ごろ、東京都文京区小石川にある東京学芸大付属竹早小学校の3階理科室から出火した。

 児童らは屋外に避難し、けが人や逃げ遅れなどは確認されていない。東京消防庁のポンプ車など約20台が出て消火活動に当たっている。

 現場は、東京メトロ後楽園駅から北西約900メートルの学校や大学などが立ち並ぶ地域。 

2017年

8月

30日

国立大付属校に「脱エリート化を」 学力でなく抽選に?

 

 

 国立大学の付属校が「エリート化」し、本来の役割を十分に果たせていないとして、文部科学省の有識者会議は29日、学力テストではなく、抽選で選ぶことなどを求める報告書をまとめた。学習能力や家庭環境などが違う多様な子どもを受け入れ、付属校での研究成果を教育政策にいかしやすくすることが狙いだ。2021年度末までに結論を出すよう、各大学に求めた。

 国立大の付属校は本来、実験的・先導的な学校教育を行う▽教育実習の実施▽大学・学部の教員養成に関する研究への協力――といった役割を担う目的で設立された。だが、「一部がエリート校化し、教育課題への取り組みが不十分だ」などの指摘が出ていた。また、学校現場で教員の新規採用が減る一方、発達障害や外国人の子の支援へのニーズなどが高まり、有識者会議は国立の教員養成大・学部の改革と一体で付属校のあり方を検討してきた。

 報告書では入学の際に学力テストを課さず、研究・実験校であることについて保護者の同意を得て、抽選で選考することや、学力テストが選考に占める割合を下げることを提案。同じ国立大の付属校間で、無試験で進学できる仕組みにも見直しの検討を求めた。「多くの学校に共通する課題と対応策のあぶり出しが重要だ」とし、教員の多忙化解消などで付属校が先導役になることも求めた。

 文科省によると、国立大付属学校は現在、幼稚園49、小学校70、中学校71、高校15など計256校あり、約9万人が通っている。


■有識者会議が国立大付属校に求める主な改革

・学力テストを課さず、抽選など多様な選考を実施

・同じ国立大付属校間の無試験の「内部進学」などを見直す

・教員の多忙化解消などで公立校のモデルをめざす

・30~40年の長期間の教職生活を視野に、教員の研修機能を強化

・2021年度末までに結論をまとめ、できるものから実施


朝日新聞社  2017.8.29    転載

2017年

3月

22日

こちらは着々と…東京に“59年ぶり私立小学校”

 

こちらは着々と…東京に“59年ぶり私立小学校”

 

 

 

“私立小学校の新設”と聞けば、今や誰もがコンニャク、教育勅語、そして安倍夫妻の顔まで浮かぶようになってしまった。でも、それは大阪のあの学園に限ってのお話。

 東京・世田谷では騒動とは関係なく、東京農業大学が着々と私立小学校新設の準備を進めている。

 教育雑誌記者の話。

「これまで農大は、高校を3つ、中学校を2つ開校してきました。ここにきて小学校をプラスすることによって、農大のブランド力を一層高めようとしているのです。農業はもちろん、大学の設備を使った体験授業など、農大ならではのカリキュラムを考えているそうで、2019年の開校を目指しています」

 もし都が認可すれば、23区内では59年ぶりという。

 半世紀以上もの間、なぜ新設が叶わなかったのか。

「一番は土地の問題です。23区内で中規模の小学校を新設する場合、都の規定で、児童一人当たり10平方メートル分の広さを持つ運動場が必要となります」(同)

 学校関係者によれば、新設予定の小学校は1学年2クラスで、1クラス当たり36人というから、全校生徒432人×10で4320平方メートル。これは東京ドームグラウンド3分の1の広さ。国有地を格安で払い下げてもらえれば話は別だが、23区内でこの広さを確保するのは確かに厳しい。

「農大の場合、キャンパス内の所有地に設置するため、土地取得の必要はありません。校舎の建築費も自前で賄っています」(先の関係者)

 それでも、認可までの道のりはまだまだ遠い。

「昨年11月にやっと設置計画書が承認され、翌月からようやく着工しました。来年4月末に設備が全て完成した段階で再度審査があり、認可が降りるのは9月末が最短。そこから願書を受け付け、11月に入学試験、翌年4月に入学式ですから、バタバタですよ」(同)

 工事の段階で認可申請をしていたあの学校とは大違いだが、その一方、ちょっとだけ似ている点もある。新設予定の小学校の名は、大学の花である「稲の花」から取り、「稲花(とうか)小学校」と名付ける予定。一方、森友学園が新設を目指していたのは、「瑞穂の國記念小學院」。偶然、どちらも米に由来する名が冠されている。

 とまれ、こちらは無事に開校を迎えられそうだ。

「週刊新潮」2017年3月23日号 掲載

2016年

12月

08日

滋賀・近江兄弟社小が募集停止 18年度以降、入学者数低迷で

 

学校法人ヴォーリズ学園(滋賀県近江八幡市)が、県内唯一の私立小である近江兄弟社小(同市浅小井町)の2018年度以降の募集を行わない方針を固めたことが7日、分かった。少子化による入学者数低迷と県内での私立小のニーズ低下が大きな要因。在校生が卒業するまで教育活動は続ける。


 県私学・大学振興課や同校によると、現在の在校生は151人と収容定員432人の35%にとどまる。入学者数は5年連続で募集定員を下回り、人件費や運営費をまかなう上で採算のとれない状態が続いてきた。


 学校法人が11月14日に開いた常任理事会で募集停止の方針を決断した。今月15日の理事会と評議員会で正式に決定し、17日に教職員と在校生の保護者、来春の入学予定者の保護者を対象にそれぞれ説明会を行う。全校児童には7日の朝礼で事情を伝えた。


 募集を再開しない限り、17年度の入学者が卒業する23年3月で休校となる。清田剛校長は京都新聞の取材に対し、「非常に残念な決断をしなければならない。100年を超える歴史あるヴォーリズ学園がさらに発展する過程の一つと受け止めている。最後の一人が卒業するまで努力を惜しみません」と話した。


 近江兄弟社小のホームページによると、1922年に創立されたキリスト教主義を建学の精神に据えるヴォーリズ学園が母体で、47年に開校。2014年に現在地に移転した。

 

京都新聞 2016.12.8

2016年

2月

02日

2022年 公立初の小中高一貫校 開校へ

 

 

写真・図版
都立小中高一貫校の構想



東京都が6年後、小学校入試の「お受験」に参入する。公立初の小中高一貫校をつくり、入試で選んだ子どもを「エリート」に育てる考えだ。私立側には早くも、学費が格安なライバル出現を懸念する声がある。

 


 「世界で活躍し、日本の将来を担う人材を育成する」。都教育委員会の幹部らでつくる一貫校新設の検討委員会はログイン前の続き、一貫校の目標をこう掲げている。

 

 

 2022年度開校を目指す一貫校の看板は、「英語教育」。小学校低学年から外国人が指導し、中学・高校では英語で論文を書いたり、議論したりする力をつける。海外留学にも力を入れる考えだ。他の教科も土曜授業などで授業数を増やし、中学の内容を小学校で教えるなどの「先取り教育」をする。

 

 

 児童は入試で選ぶ。ただ、小学校の入試に受かった全員が高校まで進めるわけではなく、中学入学時には小学校の成績を踏まえふるい分けるという。

 

 元々発案したのは猪瀬直樹前知事。「理数系人材の育成」を掲げたが、「幼児段階で理数系の才能を評価するのは困難」などと疑問視され、猪瀬氏の辞任もあって頓挫。その計画が内容を変えて復活した。「都立ブランド向上の一助になれば」と都教委幹部はいう。

 

 

 都立校では、日比谷高校などが難関大への合格者数の多さを誇っていたが、1970年ごろから私立が優勢に。都教委は03年の学区制撤廃などで挽回(ばんかい)を図り、05年から都立中高一貫校を10校新設した。授業料が格安で、毎年東京大などへの合格者を出しており、応募倍率は5~7倍ほどと人気だ。そこに今度は小学校も加え、「子どもの資質や能力を一層伸ばす」(都教委幹部)という。別の幹部は「私立に通えない低所得層の受け皿としても公立の一貫校が必要」と話した。

 

 

 新設校は、都立中高一貫校の立川国際中等教育学校(立川市)に付属小を設ける形で開校する予定。教育委員からは「都立にしかできない学校像が見えない」など異論も出たが、検討委は「公立校の新たな教育モデル」にしたい考えだ。

 

 

 文部科学省によると、公立小が入試を行うことは、法令上問題ないという。担当者は「東京など財政力のある自治体に限った動きだろう。現行の『6・3・3』より良い学制を探る例として注視する」と話す。

 

 


 ■学費格安、戸惑う私立

 

 

 都の構想に、私立側からは困惑する声も漏れる。

 

 「受験競争の過熱化を招き、教育格差を拡大する」。1月下旬にあった都教委の定例会で、都内の私立426校でつくる東京私立中学高校協会が出した「抗議文」が紹介された。協会の幹部は「少子化が進み、私立小の児童募集は難しくなる。なぜ今さら公立が進出するのか」と言う。

 

 

 「小中は学費無料でしょ? 子どもをとられる学校が出てくると思う」。東京23区内のある私立小学校長は都立小の影響を心配する。私立小の初年度納入金は100万円超が珍しくない。「都立一貫校から難関大に多く進んだり、今後23区内にもできたりしたら、人気を集めるだろう」と話す。

 

 一方、23区の別の私立小学校長は「私立小に通わせる親は校風を気に入っていたり高所得だったりする人たち。都立小は受験層を広げる可能性はあるが、私学に影響はない」と冷静だ。

 

 受験情報サイトを運営するバレクセル(東京都渋谷区)などによると、私立・国立の小学校は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に約100校あり、約1万人が受験する。子どもの多くが受験準備で塾に通うといい、費用は年100万~200万円も珍しくないという。

 

 

 長女(3)を受験塾に通わせる東京都新宿区の主婦(35)は「安い学費は魅力だけど、公立には教員異動があるので不安」。

 

 小学校受験塾「アンテナ・プレスクール」(渋谷区)の石井至校長は「都立小の成否は、どれだけ優秀な教員を集められるかがカギ」とみる。

 

 「〈お受験〉の歴史学」の著書がある同志社女子大の小針誠准教授(教育社会学)は「東京の公立復権のためには、特殊な1校をつくるだけでは意義が薄い。公立全体の底上げにこそ力を入れるべきだ」と話す。


2016.2.2  朝日新聞から転載

 

 

2015年

7月

01日

<独禁法違反警告>新設校に「私立小児童の転入やめて」要請


西日本私立小学校連合会(西私小連)など4団体が新設校に対し、他の私立小の児童を転入させないよう要請したことが分かり、公正取引委員会は30日、独占禁止法(事業者団体による競争制限)に違反するおそれがあるとして警告した。西私小連は少子化に伴う児童の引き抜き合いを防ぐため加盟校間での転校も制限していた。公取委が私立小の団体に同法違反の疑いで警告するのは初めて。

 西私小連には近畿、中国、四国、中部、北陸地方の私立小59校が加盟する。他に警告を受けたのは大阪府、京都府、兵庫県の私立小連合会。

 公取委によると、4団体が2013年3月、洛南高校付属小(京都府向日=むこう=市)の開校を翌年に控えた学校法人真言宗洛南学園に、他の私立小の児童を受け入れないよう要請した。同校は西私小連に加盟していないが、2、3年生の転入学試験の募集要項に京都府内の私立小の児童は受験を「遠慮」するよう記載。公立小在籍と偽って出願した私立小児童2人が、合格後に入学を辞退することになったという。

 西私小連は12年5月の総会で、近隣府県の加盟校間の転入は原則として認めないと決めた。京都、大阪、兵庫の3団体も同様の取り決めをしていた。

 公取委は「教育サービスの取引分野で競争を実質的に制限していた疑いがある」と指摘。4団体はすでに決定を破棄した。

 また、京都私小連が入試の実施日を統一し、大阪府私小連と兵庫県私小連が新設校に募集学年を限定するよう要望することを決定していたことも独禁法違反につながるおそれがあるとして、公取委は30日、口頭注意した。

 西私小連は洛南学園への要望について「東大など国立大合格者が多い洛南高校の付属小に児童が転校することを危惧した」と説明したという。

 国の学校基本調査などによると、3府県の児童数が減る一方、「関関同立」と呼ばれる有名私大が相次いで小学校を開設し、私立小の学校数は04年32校から14年39校に増加。経営環境が悪化し、過去4年間に西私小連加盟校で常に定員を満たしたのは13校にとどまった。

 大阪府私小連の松藤吉弘事務局長は転入禁止の取り決めについて「過当競争を回避するための紳士協定だった」と釈明している。西私小連の大谷彰良(てるよし)会長は「法令順守の徹底に努めたい」とのコメントを発表した。

 ◇元文部官僚の寺脇研・京都造形芸術大教授の話

 どこで学ぶかは児童の自由だ。私立小が児童の転校を制限するのは、児童の学習する権利を無視していると言える。文部科学省は他の地域でもこのような慣行がないか調査すべきだ。


2015.6.30 毎日新聞から転載


2015年

6月

24日

学力、お金、人間関係…「公立校と私立校」選択の差

 

 私立中高一貫校を中心に、私立校が人気だ。教育力が高そう、生徒一人ひとりを丁寧に見てくれる、生徒指導がしっかりとしている、裕福な家庭が多いのでイジメが少なそう…などさまざまな理由がありそうだが、公立校に比べて学費が高い私立校は本当に“おトク”なのだろうか。


 『公立VS私立』(橘木俊詔/ベストセラーズ)は、小学校、中学校、高校、大学に至るまで、「学力」「お金」「人間関係」の3要素で「公立VS私立」を比較している。公立と私立の選択で、どれくらいの差が表れるものなのだろうか。本書では、政府の統計、週刊誌のランキング、そして独自に行った公立中高・私立中高出身者へのアンケートなどを元に、徹底的に数値で比較しているのだが、データをすべて掲載するわけにはいかないので、かいつまんで紹介したい。(※本書は2014年2月に出版されており、データは最新ではない場合がある)

 



(1)学力…いい教育が受けられるのは?

・2013年度全国学力テスト
全国の小・中学生が対象。私立校のほうが正答率が高い。私立中学では学力試験を課し、学力が高い生徒を選別しているからと考えられる。また、入学後、塾や家庭教師といった学校外での学習が常態化していることも、大きな要因か。

・「いい大学」に行けるのは
「東大合格者ランキング」は私立中高一貫校からの合格者が圧倒。「京大合格者ラインキング」もトップ10のうち7校が私立。

・国際的な学力調査PISA(OECD加盟国の生徒に対する学習到達度調査/2009年度調査結果)
「読解力」の項目…国公立が上回る。私立高校は非常にさまざまなランクの学校があり、学校間格差が顕著であるからか。

 高偏差値の大学に行けるトップ層には私立高出身者が多いが、全般的なテストの平均値では、学校間格差が少ない公立校のほうが高い。

・「学問」の探求
日本人歴代ノーベル賞受賞者19人は、すべて国立大出身。国立大の研究補助金が潤沢だからか。また、私立と国公立大では、教員数と生徒数の割合で約2倍の開きがある。その分、国公立大のほうが濃く学ぶことができる。

 

 



(2)お金…「コスト」と「リターン」からみて経済的なのは?

・大学卒業までにかかる学費(典型的なケース)
オール公立…949万円(小中高大とも公立)
中学から私立…1642万円(公立小、私立中高、大学は私立理系)
オール私立…2344万円(私立小、私立中高、大学は私立理系)

 低成長時代の不況下で、会社員の給料は下がるが大学費用の割合は高まっており、世帯年収の4割が学費負担に。慶應義塾大ですら、自宅通学の学生が多く「関東圏の一ローカル大学化している」とも。

・中学受験の「リターン」
年収を比較すると、中高に限っては、私立中高出身者のほうが「金銭的にはかなり回収している」。

・生涯年収(「大学別生涯賃金期待値ランキング」週刊ダイヤモンド/2012.11.3号)
1位は、主要400企業への就職率が54.4%とダントツの一橋大学。2位に国際教養大。3位は慶應。

 基本はオール国公立コースが費用最少で高リターン。ただし、卒業後は私立のほうが人脈などの面で有利な場合もあるので、中学から私立に行くという選択もあってよさそう。国立大へ入学するために私立中高を選ぶ層は少なくない。

 

 



(3)人間関係…豊かな人間関係が築けるのは?

私立校=特定の階層が集まりやすい
 とくに別学の場合は深い絆を持った同性の友だちができやすい。男子校出身者の卒業後の“親友関係キープ率”は6割を超えるというデータも。中高一貫校では、3年間の学校に比べ、そのぶん友情を育みやすい。

公立校=社会の縮図
 いろいろな子どもがいる環境で育つことで、応用力がある、幅広い考え方を持つ大人になる可能性が高い。大人になってから気づいたのでは遅すぎる。

 公立校と私立校を同列に比較するのはお門違いという意見もある。私立校は独自の教育方針に基いて教育を行い、公立校は税金の投入により特殊な教育方針に縛られることなく、国民全員に対して平等に教育水準を上げることが目的だ。子どもには個性がある。学力、お金、人間関係についての比較だけで学校選びをするのではなく、公立・私立向き、教育方針、部活動、校風に合うかなどの相性も大切にしてもらいたい。

 

2016.6  ダ・ヴィンチニュース から引用


2013年

5月

27日

幼児の体力 基本的な動き 満遍なく

幼児期の運動がなぜ今、重要視されているのか。

 

 文部科学省の幼児期運動指針策定にも関わった山梨大の中村和彦教授(53)は、「最近は、小学校入学時には運動する子としない子の差が開きすぎており、指導が難しくなる傾向もある」と指摘する。

 

 

大人が促して

 文部科学省が1964年から小学生以上を対象に行ってきた体力テストの結果は、85年頃をピークに低迷。ここ10年ほどは、その原因は幼児期にあるとの見方が主流になっている。

 中村教授らは3~5歳の幼児約150人を対象に、「走る時に腕が振れているか」「ボールを投げる時に上体をひねっているか」などの観点から7種類の動きを点数化して調査。その結果、2007年に調査した5歳児約60人の得点は、85年に同様の調査をした3歳児と同程度で、未熟な動きが目立ったという。

 中村教授はドイツやアメリカの研究を参考に、「ぶらさがる」「はう」「なげる」など、小学校低学年までに身に着けたい基本的な体の動きをまとめている。満遍なく体験すればバランスよく全身が鍛えられるといい、「周囲の大人が、子どもに足りない動きを促して」と話す。

 

 山梨県南アルプス市は、中村教授らの指導を受け、06年から市内19保育園で、体力作りに取り組んでいる。「最近は、しゃがんでいられない子どもが目立つ。かがんだり、くぐったりする動作が足りないのでは」と市立百田(ひゃくた)保育所の保坂和美所長(59)は指摘する。子どもが下をくぐれるようにと、平均台をいつも設置。しゃがんだ状態でくぐり抜けるトンネル状の遊具も購入した。

 

 幼児を持つ母親らの多くも、子どもが体を動かして遊ぶ時間が不足していると感じている。玩具の輸入・販売会社「ボーネルンド」(東京)が4月に行った調査では、4歳以上の幼児の母親312人のうち98%が、「子どもの成長に体を動かして遊ぶ時間は重要」と回答。しかし、自分の子が体を動かす時間を「十分だと思う」と答えたのは48%にとどまった。

 

 

遊ぶ時間 不足

 

 遊ぶ時間が足りない理由は「一緒に遊ぶ仲間が少ない」が33%と最多で、「公園などが近所に少ないか、ない」が18%。調査は小学生の子をもつ母親も対象にしており、子どもが体を動かして遊ぶ時間や頻度は幼児期がピークで、成長するにつれ減少する傾向にある。

 中村教授は、福島県郡山市の子どもたちの体力向上をめざすプロジェクトにも携わっている。福島第一原発事故後、子どもの外遊びが制限された同県内に何度も足を運び、「幼児期は、基礎的な体の動きを身に着ける大事な時期」と改めて実感したという。今年度は、長く外遊びが制限されていた同市内の幼稚園児の調査にも乗り出す。

 「子どもの頃に様々な動きを体験させることが必要だと、福島だけでなく、全国の保護者や指導者に知ってほしい」と、中村教授は訴えている。

 

 

「運動遊び」ゲーム仕立てでも

 
中村教授は、首都圏の小学校教師らのグループと共に、基本的な体の動きを組み合わせた「運動遊び」も推奨している。

 例えば、親や友達と向かい合って座り、手首を握り合い、タイミングを合わせて一緒に立ち上がれば、「たつ」「ひく」など基本の動きが身に着く。組み合わせた手の上にボールを載せて立ち上がるのも楽しい。

 
両手、両足をついて歩く「クマ歩き」も、机やイスの下をくぐったり、障害物をまたいだりすると、さらに動きが増える。競争やゲーム仕立てにすれば、子どもは「面白い」と熱中する。自分から何度でも繰り返すので、上達しやすいという。


2013年5月25日  読売新聞から転載)

2013年

4月

28日

子どもに使ってはいけない10の言葉(と代わりに使うべき言葉)

最近の研究により、子どもに対して話すときによく使われている一見とても建設的な言葉のいくつかが、実は極めて有害だとわかりました。

良かれと思って口にしているのに、子どもたちはそうした言葉によって内面的な価値基準を信頼できなくなり、人を欺くようになり、できる限り楽をして難しいことには挑戦しなくなるようしつけけられてしまうのだそうです。


この記事は、米ライフハック系メディア「Lifehack」のShelley Phillips氏によるゲスト投稿です。



それでは、避けるべき10の言葉をみていきましょう。さらに、子どもたちに本来備わっている自発性を促し人との気持ちのつながりを強められる、「別の言い回し」や「やり方」も併せて紹介します。




1.「よくできたね!」

この言葉の問題点は、往々にして何度も繰り返されることと、実際には子どもがたいして努力していないことに対しても使われることです。子どもたちは、パパやママがそう口にしたことは何でも、そう口にした時だけ、「よくやった」ことなのだと思い込んでしまいます。

その代わりに、「頑張ったんだね!」と声を掛けてあげましょう。子どもの「努力したこと」に注目することで、努力することは、結果よりもずっと大事なことなのだと教えることができます。そうすれば、子どもたちは難しいことに挑戦する時も粘り強くなり、失敗は次の成功へのステップなのだと理解するでしょう。




2.「いい子ね!」

 

この言葉は良かれと思って使われたとしても、こめられた思いとは逆の効果をもたらします。ほとんどの親は子どもの自尊心を高めるつもりでこの言葉を使います。しかし、残念なことにかなり違った影響を与えてしまうのです。子どもたちは、あなたに頼まれた用事をやってのけた後に「いい子ね!」と言われると、あなたが頼んだことをしたから「良い」のに過ぎないと思い込んでしまいます。これは、「良い子」というステータスを失うことが怖くなるというシナリオにつながり、自ら率先して協力するという意欲が失われ、協力するのは肯定的なフィードバックを受けるためだ、という意識に変わってしまいます。

代わりに「お手伝いしてくれるから、とってもうれしいな」と言ってみましょう。この言葉はあなたが求めている内容と子どもたちの行動があなたにどう影響するのか本当の情報を子どもたちに届けてくれます。また、あなたの気持ちは完全に省いて、「あなたが、おもちゃをお友達にも使わせてあげたのを見てたよ」という風に話しかけることもできるでしょう。そうすることで、子どもは共有することが「良い」ことかどうかを自分で判断できるようになり、ただあなたに褒められたいからでなく、自発的にその行動を繰り返すようになります。



3.「絵が上手ね!」

 

子どもの作品に親の評価や判断を与えると、子どもが自分の作品を判断し評価する機会を奪ってしまいます。

代わりに、「赤と青と黄色を使ってるね! 何を描いたか教えてくれる?」などのような言い方をしてみましょう。評価を与えるのではなく、ただ観察することできれいな絵なのかそうでないかを子どもが判断できるようになります。絵について子ども自身に語らせることで、自分で描いた絵を評価したり、描いた意図やスキルを共有したりする取っ掛かりを提供できます。こうした会話は、子どもが成長し芸術的な才能を伸ばすにつれてその創造性を育てるものです。




4.「いい加減に止めないと、○○だよ!」

子どもを脅しても良いことはほとんどありません。第1にあなたはそのことで、子どもに絶対身につけて欲しくないスキル自体を教えています。つまり、相手が望まないときでも欲しいものを得るために暴力や悪知恵を使えばいいということです。そして第2に、怒りにかられて罰を持ち出したものの、それをあくまで貫くか従わなければ引き下がって結局あなたの脅しは無意味なものだと子どもに教えることになるという、困った立場に自分を置いてしまっているのです。いずれにしても、あなたは望んだ結果を得られず、子どもとのつながりにダメージを与えてしまいます。

脅そうとする衝動を抑えるのは難しいですが、気持ちを共有し、別のもっと適切なことに目を向けさせるといいでしょう。「弟を叩いてはいけません。怪我したら大変でしょ。仕返しされて今度はあなたが叩かれるかもしれないし。何かを叩きたくなったら、枕とかソファーとかベッドなら叩いてもいいよ」と話してみましょう。より安全で子どもが自分の感情を表現できる他の手段を提供することで、振る舞いに明確な線引きをしつつ子どもの感情もきちんと認めることになります。こうすることで、より優れた自制心と精神的な安定を育てられるのです。



5.「もし○○したら、○○をあげるよ」

モノで子どもを釣るのは有害です。それは、純粋に安らぎや調和のために協力したいという思いを邪魔する場合と同じくらいひどいものです。この手の取り引きは歯止めが効かなくなる可能性があり、あまり頻繁に使っていると、こんな風に後で泣きを見ることになります:「イヤだ! レゴを買ってくれなきゃ部屋の片づけはしない!」

代わりに、「片づけのお手伝いをしてくれてどうもありがとう!」と言ってみましょう。心からの感謝の気持ちを伝えると、子どもたちはみずからもっと手伝おうという気になるものです。もし子どもがだんだんと手伝わなくなってきたら以前手伝ってくれたことを思い出させましょう。「数カ月前、ごみ出しを手伝ってくれたこと覚えてる? あの時はとっても助かったのよ。ありがとう!」と語りかけ、お手伝いをすることは楽しくて本質的にやりがいのあることなのだと、子ども自身に気づかせましょう。




6.「お利口さんね!」 

利口だねという言葉は、子どもが自信を持ち自尊心を高めるのに役立つと考えがちです。けれども残念ながら、こうしたことを褒める手法は実際には反対の結果を招きます。おまえは頭がいいと子どもに告げることで、いい成績を取った時だけ、目的を達成した時だけ、または理想的な結果を生み出した時だけ利口なのだというメッセージを意図せず送ってしまいます。それは、期待に応えなければという大きなプレッシャーになります。

いくつかの研究結果から、パズルを解いた後で頭がいいと子どもたちを褒めた場合、それ以後その子たちはさらに難しいパズルを解こうとはしなくなる傾向があるとわかりました。これは、もしうまくできなかったら「利口」ではなくなってしまうという不安を子どもたちが持ってしまうからです。

代わりに、努力したことへの評価を子どもに伝えましょう。結果ではなく努力に目を向けることで、本当に大事なことが何かを子どもたちに教えられます。もちろん、パズルを解くことは楽しいですが、もっと難しいパズルに挑戦することも同じように楽しいのです。前述の研究で努力に注目して「うわあ、すごく頑張ったね!」と声を掛けた場合、より難しいパズルを解こうとする子どもの割合は大幅に増えたそうです。


 



7.「泣かないで」

子どもの涙を見るのはなかなか辛いものです。けれども、「泣かないで」と言うのは子どもたちの気持ちを認めず、おまえが泣くことは受け入れられないと宣告しているようなものです。これにより子どもは感情の押し殺し方を学び、最終的にはより大きな感情の爆発につながりかねません。

子どもが泣いている時は、少し距離を置いてみてください。そして、「泣いてもいいんだよ。誰だって、泣きたい時はあるから。ここにいるから、いつでも話を聞いてあげるよ」と語りかけてあげましょう。また、「今すぐ公園に行けないのがとっても残念なのかな?」というように子どもが抱えているだろう感情を言葉にしてあげることもできます。そうすれば子どもは自分の気持ちを認識してそれを言葉にすることをより早くできるようになるかもしれません。また、感情を表現するように促すことは感情の調節方法を学ぶ助けになります。これはその子にとって、生涯にわたって大切なスキルとなるものです。




8.「○○するって約束してあげる」

約束が破られると子どもはひどく傷つきます。先のことはどうなるかわからないのですからこの言葉は今後一切使わないことをお勧めします。

代わりに、子どもに対して正直でいましょう。「今週末はサラちゃんと遊びたいんだよね。ちゃんとわかっているよ。そうできるように頑張ろうね。でもね、思ってもみないことが起きることもあるって覚えておいて欲しいの。だから、今週末のこと、絶対とは言えないんだ」といったように誠実に言うのです。また、「する」と言ったことについて本当にベストを尽くすことも忘れてはいけません。約束を守れば信頼が生まれ、破れば絆が損なわれます。何を口にするかは慎重に考え約束を守るために努力を尽くす必要があります。

もうひとつ注意点があります。もし約束を守れないなら、そのことを潔く認め子どもに謝りましょう。あなたは同時に、子どもに対して約束を守れなくなった場合のふるまい方を教えていることを忘れないでください。

いろいろな場面で、約束を破らざるを得ないことがあります。あなたにはささいなことに思えても子どもにとっては重大なことかもしれません。ですから、正直者の手本になれるよう最善を尽くし、そうできない場合には、進んで自分の失敗に責任を取りましょう。




9.「大したことじゃないでしょ!」

大人はいろいろな形で子どもの気持ちを最小限に評価し軽く扱います。この点には、よく注意すべきです。大人の視点で取るに足らないことにだって子どもたちは価値を見出すこともあるのです。そのため、子どもの視点から物事を見るように努めてください。良し悪しの線引きをしたり、子どもの要求を拒否する場合でも、その「気持ち」については理解してあげましょう

おまえの望みはたいしたことではないと説得するより、「そうしたいのはわかるけど、今日は無理なんだよ」とか「がっかりさせて悪いけど、ダメなんだよね」などの言い方をしましょう。はるかに子どもを尊重した言い方です。




10.「何でそんなことをしたの?」

あなたが問題だと思うことを子どもがしてしまったなら、そのことについて話をすべきです。ですが、感情的になって冷静な判断ができない時は子どもにとって間違いから何かを学ぶいいタイミングではありません。また、「なんで?」と問いただすことは、自分のふるまいについて子どもに考えさせ分析させるものではあるものの、大人にでさえ難しいスキルを求めていることになります。この問いかけに直面した子どもの多くは、黙り込んで自己防衛的になってしまいます。

代わりに、子どもが何を感じていたのか、根本的なニーズは何だったのかを推測して会話のきっかけをつくりましょう。例えば、「お友達があなたの考えを全然聞こうとしないから不機嫌だったの?」のように。子どもが何を感じ何を必要としていたのかを理解しようと努めることで、その出来事について腹を立てている自分の気持ちが治まることに気づくこともあるでしょう。



5 Things To Stop Saying to Your Kids and What to Say Instead | Lifehack

Tessa Miller(原文/訳:風見隆/ガリレオ)


(2013.4.27 ライフハッカー日本版から転載) 

2013年

2月

18日

算数が得意な子の脳は、どこが違うのか?

スラスラと問題が解ける子の脳の中は、いつまでたっても答えが出ない子とどう違うのか。「解ける子の脳」になるための秘訣を、脳のスペシャリストに聞いた。

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■問題を解くとき、脳の複数の箇所が稼働

 世の中には、幼くして方程式が解けたり、微分積分を理解できたりするスーパーキッズがいるという。一方で「数字を見るだけで頭が痛くなる」というような算数嫌いの子も存在する。算数ができる子とできない子は何が違うのだろう。そもそも生まれつき脳に差があるのだろうか。MRIによる脳画像分析のスペシャリストで「脳の学校」代表の加藤俊徳氏に、その違いを聞いてみた。

「算数ができるかできないかは、生まれつきの能力の差ではありません。訓練すれば誰でもできるようになるのです」と言う加藤氏。「うちの子は算数ができない」と嘆いている親にとっては朗報だが、ではいったいどこで差がつくのだろうか。

「ポイントは、脳の中に問題を解く回路ができているか、そしてそれが太いかどうかです」

 加藤氏はまず、算数や数学の問題を解く際に脳の中でどんなことが起こっているかを説明してくれた。

「算数の問題を解く際には、脳の複数の箇所を使います。脳には大きく分けて、前頭葉、後頭葉、頭頂葉、側頭葉がありますが、それぞれ、運動、視覚、聴覚、記憶など人間が生きていくうえでのさまざまな活動をつかさどっています。脳の中にも、いわゆる『役割』というものがあるのですが、現在の研究では、算数や数学のいろいろな問題を解くときに、脳のどの箇所を使っている、と特定はされていません」

 たとえば国語が得意なら、言語や感情をつかさどる部分、美術が得意なら視覚をつかさどる部分を主に使う、というようにある程度特定できるが、算数や数学の場合は、そうではないらしい。

「脳の損傷研究でわかっているのは、脳のどこが壊れても、ちょっとずつ算数や数学の能力が下がるということ。つまり、算数や数学の問題を解く際には、脳の複数の部分を同時に働かせていると考えられます」

 そこで加藤氏は、二つの脳の図を描いて説明してくれた。

「Aが、悩んでいるとき、Bが楽に解けるときの脳のイメージです。初めて問題が出されたとき、脳の中ではああでもない、こうでもないと思考がさまざまな箇所を巡って答えを導き出そうとします。これがAの脳」

 問題を解くためにはどの部分を使えばいいかまだ絞り切れていない状態です。

「一方で、楽に解けるときの脳では、脳のどの箇所をどの順番で使えばいいかが特定されています。そのルートが出来上がっているので、Bの図のようにスムーズに思考回路がつながって、解答が出せるのです」

 なるほど。これが先ほどの「問題を解く回路」というわけだ。

 

 

■何度も解くと簡単に解ける理由

「解けない問題が解けたとき、カチッと何かがはまったような感じがして、すっきりした経験があるでしょう。これが、回路がつながった瞬間なのです」

 一度解いた問題をもう一度解いたときに簡単に感じられたり、前より短時間で解けたりするのは、この回路が出来上がっているからなのだ。Bの脳では、脳に負担がかかっていないクールな状態。脳は無駄なエネルギーを使わなくて済むのである。一方で、Aでは脳の中で思考の試行錯誤が行われているので、かなりの興奮状態だ。

「問題が解けなくてどうしていいかわからない、頭の中がふわ~っとなるような感じが、まさしくAの状態なのです」

 この回路を専門的に説明すると、神経細胞同士がネットワークを形成していくということ。約千億個以上の神経細胞がある脳は、細胞同士が集まって思考の中枢となっている神経細胞と、その神経をつなぐ連絡線維の二つで構成されている。脳が適切な刺激を与えられてさまざまな情報を吸収していくと、それまで未発達だった神経細胞と連絡線維は、樹木の枝が伸びるように他の細胞とつながっていく。使われることで回路は太くなり、より楽に問題を解けるようになる。

「必要な脳の箇所同士が連携して回路が太くなると、問題を解く際に二つのいいことが起こります」

 と加藤氏。ひとつは、「応用が利く」ことだという。

「ある問題を解く回路が確立できれば、それに類似した問題が出された際に、おおよそどこの箇所を使えばいいかが推測できます。基本の回路ができているので、そこからちょっとはずれるだけでいい。新しい問題に出合って、まったく知らない問題を解くときに試行錯誤するのとはわけが違います」

 

 

■パッと問題が解けるのは集中している証拠

 もうひとつが「集中力の向上」だ。

「回路がつながっていない頃や、つながりたての頃は、回路をつなぐパイプが細い状態。短時間で情報を運ぶことができないため、なかなか解答にたどり着けず、問題を解こうとする気持ちが散漫になりやすい。しかし回路を繰り返し使うことでパイプが太くなると、一気に多くの情報処理が可能になり、集中して問題を解くことができます」

 それではわが子もこの回路を強化していけば、スーパーキッズのようになれるのか。

 しかし、「この回路を強化するのが難しい」と加藤氏。それは、脳のある性質が関係している。

「脳は、ある回路を通って心地よいと感じたら、もう一度同じ回路を通ろうとします。でも、嫌だと思ったら二度と同じ道を通りたがらないんです」

 問題が解けるというような成功体験は脳にとって気持ちよいものであり、もう一度同じ道を通ろうとする。しかし、同じ「解ける」でも、その子のレベルに合っていないものを無理にやらせたり、お母さんから「この問題を解けるまで遊びに行っちゃダメよ!」なんて言われながら嫌々解いた場合には、たとえ解くことができても、脳にとっては苦い印象を与えてしまうのだ。

「誰かとご飯を食べて楽しかったら、また一緒に食べたいと思うでしょう。それと同じ法則が脳の回路にも当てはまるのです」

 脳の回路を強化するには、何度も同じルートを通ることが必要。そのルートを何度も通らせることができるかどうかが、優秀な子とそうでない子の分かれ目だというわけだ。子供が「楽しい」と思うような環境づくりをすることが、解ける回路をつくる第一歩かもしれない。

 算数や数学ができるようになる脳の仕組みがわかったところで、「回路をつくったり、強化する際にやってほしいことがある」と加藤氏。

 

 

■頭の中だけで考えても答えが出ないなら……

「それは、手を使うことです」

 答えがわからないときは、脳のどこを使えばいいか迷っている状態。その際に、頭の中だけで考えるより、指を折って数えたり、図に描いたり、式に起こしたりすることが大事だという。

「解けないときには、思考が脳の同じ箇所だけをグルグルと回っていることもあります。そのときに手を動かせば、思考を違う箇所に動かすことができるのです」

 算数ができる子は、わかっていることをすべて書き込んだり、文章を図示化したりする。これは、脳にも刺激を与えているというわけだ。

 

 

■答えがどこで間違ったかを把握させよう

 最後に、算数で育まれる力について一言。

「人間は生まれると『周りの人はこうしている』とまず他人を認識し、その後だんだん『自分はどうなのか』と、自分を確かめるようになります。算数で一番育まれるのは、前頭葉で発達するこの自己認識能力だと思います」

 算数には必ず答えがある。問題を間違えた場合、自分がどこで誤ったかというプロセスを計算式の中で確認できる。それを認められる子は、どんどん成長していける。

「答えが間違ったという事実だけを意識する子は、それ以上先へ進めません」

 算数で間違いを把握する作業は、自己認識能力につながるものなのだ。

「親は、子供が算数の問題で間違えた際に、どこでどんな間違いをしたかを子供自身が把握しているかにも気を付けたいところです。問題が解ける、解けないで一喜一憂することよりも、この問題を通して、子供の自己認識能力が成長しているんだ、と考えてみてはいかがでしょうか」

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加藤俊徳●Toshinori Kato

医師、医学博士。「脳の学校」代表。国立精神・神経センター、ミネソタ大学放射線科などを経て現職。これまで、1万人以上の脳画像を分析してきた。著書に『脳の強化書』(あさ出版)など。

(2013.2.16 プレジデントファミリーから)